試用期間の終わりに「本採用は見送ります」と言われたら、まず何を確認すべきでしょうか。
試用期間中でも、すでに労働契約は成立しています。そのため、会社が自由に本採用を拒否できるわけではありません。理由、雇用終了日、解雇予告の扱いを確認することが重要です。
本採用見送りは、一般に留保された解約権の行使として扱われます。ただし、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。また、試用期間を延長された場合も、規定と延長理由を確かめましょう。
この記事では元人事の視点から、本採用見送りの理由、試用期間延長への対応、会社への質問例、相談先を整理します。
試用期間の本採用見送りとは?
試用期間は、勤務状況や仕事への適性などを確認するために設けられる期間です。期間の終了時に雇用を続けない判断を「本採用見送り」や「本採用拒否」と呼びます。
ただし、試用期間は無契約で働く期間ではありません。通常は、採用時に労働契約が成立しています。したがって、本採用拒否は、一般に解雇として扱われます。
通常の解雇と比べて、適性を判断するための一定の裁量は認められます。それでも、合理的な理由がなければ本採用を拒否できません。
実際の相談事例は、中央労働委員会「試用期間終了後の本採用拒否」でも確認できます。
※本記事は、期間の定めのない労働契約で試用期間を設けた場合を主な対象としています。有期雇用契約では、契約期間や更新に関する別の検討が必要です。
本採用見送りを告げられたら、まず確認したい3つのこと
1.見送りの理由を具体的に聞く
最初に、どのような事実が判断の根拠になったのかを確かめます。勤務態度や業務能力が理由なら、指摘された時期や改善の機会があったかも確認しましょう。
「適性がない」という説明だけでは、何が問題だったのか分かりません。具体的な出来事を聞くことが大切です。
2.解雇理由を示す書面を請求する
次に、理由を書面で確認します。解雇予告を受けてから退職日までの間は、解雇理由証明書を請求できます。また、退職後も、退職の事由などについて証明書を請求できます。
いずれも労働基準法第22条に定めがあります。ただし、書面で受け取れば見送りが正当になるという意味ではありません。
3.退職日・給与・解雇予告を確かめる
さらに、雇用が終了する日を確認します。最終給与や未払い賃金なども、あわせて整理してください。
試用期間中でも、引き続き14日を超えて雇用された場合は、原則として解雇予告のルールが適用されます。通常は30日前の予告、または不足日数に応じた解雇予告手当が必要です。
会社から雇用終了を告げられたのか、自分から辞めるのかで扱いが変わります。納得できない場合は、退職届への署名を急がず、書面や説明を確認してください。
本採用見送りの主な理由と確認ポイント
| 理由の例 | 確認したいこと |
|---|---|
| 勤務態度の問題 | 具体的な注意や指摘があったか |
| 業務能力の不足 | 必要な指導と改善の機会があったか |
| 経歴の食い違い | 応募書類と事実にどんな違いがあったか |
| 遅刻や欠勤 | 回数、理由、会社側の把握内容は何か |
なお、表にある理由なら必ず本採用を見送れるわけではありません。事情の重大さや指導状況なども関係します。
試用期間を延長された場合はどうする?
本採用見送りではなく、「あと1か月様子を見たい」と試用期間の延長を告げられることもあります。しかし、延長されたからといって、本採用見送りが確定したわけではありません。
一方、会社が一方的に試用期間を延ばせるとも限りません。就業規則などの根拠や、延長が必要になった事情を確認してください。
試用期間の延長を告げられたら確認する5項目
- 就業規則や雇用契約に、延長に関する定めがあるか
- なぜ延長が必要なのか、具体的な理由は何か
- いつまで延長し、次の判断日はいつになるか
- 延長中の給与・待遇・社会保険に変更があるか
- 何を改善・達成すれば本採用を判断するのか
特に重要なのは、延長期間と評価基準です。「しばらく様子を見る」だけでは、本人も改善に取り組みにくくなります。可能なら、会社に書面やメールで説明してもらいましょう。
試用期間の延長を申し入れられたときの例文
「試用期間の延長について承知しました。判断の基準を確認したいため、延長の理由と期間を教えていただけますでしょうか。」
「本採用に向けて改善したいと考えています。特に優先して取り組むべき点と、次の評価日を確認させてください。」
「延長中の給与や労働条件について、変更の有無を書面で確認させていただけますか。」
なお、就業規則に延長の定めがある場合でも、延長が常に有効とは限りません。延長が長期に及ぶ場合や、理由が曖昧な場合は、労働局などに相談する選択肢もあります。
延長後に本採用を見送られた場合
延長後に本採用を見送られたときも、判断理由の合理性を確認する必要があります。また、延長中にどのような指導を受け、どう改善したかを整理しましょう。
試用期間を延長したという事実だけで、会社が自由に雇用を終了できるわけではありません。就業規則とこれまでの経緯を踏まえ、判断することが重要です。
本採用見送りに納得できない場合の相談先
会社の説明に納得できないときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどへ相談できます。無料で相談できる窓口もあります。
また、話し合いで解決しない場合は、あっせんなどの制度を利用できることがあります。社内での話し合いを進める前に、外部窓口へ状況を相談しても構いません。
相談に備えて、雇用契約書、就業規則、評価の記録、会社からの通知を整理しましょう。録音やメールなどを扱う際は、会社の機密情報や第三者の個人情報の管理にも注意してください。
本採用見送りを告げられたときの話し方
突然の本採用見送りには、驚きや不安が伴います。ただし、その場ですべてを判断する必要はありません。まず理由を聞き、後で確認できる記録を残しましょう。
「見送りの理由について、具体的な事実を教えていただけますか。」
「改善のために、これまでどのような指導が行われたか確認させてください。」
「解雇理由を記載した証明書を請求したいのですが、手続き方法を教えていただけますか。」
「雇用終了日と最終給与、解雇予告の扱いを書面で確認させてください。」
話し合いの日時と相手、説明された内容を記録してください。後日相談する際に、経緯を正確に伝えやすくなります。
自分の勤務記録と指導内容を整理する
これまでの業務や指導を振り返りましょう。担当業務、目標、上司からの注意、改善したことを時系列でまとめます。
そのうえで、会社の説明と自分の認識が異なる部分を整理します。感情だけで判断せず、事実を一つずつ確認することが大切です。
例えば、入社時に聞いていた仕事内容と、実際に担当した仕事が違う場合があります。その場合は、採用時の説明も振り返るとよいでしょう。
次の転職に向けてできること
本採用見送りの理由を振り返る
会社の説明を確認したうえで、自分で改善できる点があるかを考えます。ただし、見送りを告げられた事実だけで、自分の能力すべてを否定する必要はありません。
短い職歴の説明を準備する
次の応募では、在籍期間や退職理由について聞かれることがあります。事実を正確に整理し、短い説明を準備しましょう。
自分から退職する場合の考え方は、試用期間中に辞めたいときの判断方法で確認できます。
次の求人の試用期間・評価方法を確認する
求人票では、試用期間の長さと待遇の違いを確認してください。入社前に仕事内容や指導体制も聞いておくと、働く姿を具体的に想像できます。
給与面については、求人票にある試用期間中の給与の確認方法を参考にしてください。
試用期間の本採用見送り・延長でよくある質問
試用期間中なら自由に解雇されますか?
いいえ。試用期間中でも労働契約は成立しています。本採用見送りには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
試用期間の延長は会社が自由に決められますか?
自由に決められるとは限りません。就業規則などの根拠や延長理由、期間の合理性を確認する必要があります。納得できない場合は、外部窓口への相談も検討してください。
延長されたら、本採用されない可能性が高いですか?
延長された事実だけでは判断できません。何を確認するための延長なのか、評価日と改善点を会社へ確認しましょう。
本採用見送りを撤回してもらえますか?
会社との話し合いによって判断が変わる可能性はあります。ただし、必ず撤回されるとは限りません。理由や経緯を整理して相談してください。
試用期間中の解雇でも、解雇予告は必要ですか?
試用開始から引き続き14日を超えて雇用された場合は、原則として解雇予告のルールが適用されます。予告日数や手当の扱いを確認してください。
失業給付を受け取ることはできますか?
雇用保険の加入期間や離職理由などによって異なります。離職票の記載も確認し、受給資格や手続きはハローワークへ相談してください。
まとめ|試用期間の本採用見送りは理由と書面を確認する
- 本採用見送りには合理的な理由と相当性が求められる
- 理由、退職日、給与、解雇予告の扱いを確認する
- 試用期間を延長されたら、規定・理由・期間・評価基準を聞く
- 退職届への署名を急がず、経緯を記録する
- 納得できなければ、労働局などの窓口へ相談する
試用期間中の評価は、今後の働き方を考える材料にもなります。ただし、不明点を残したまま、雇用終了を受け入れる必要はありません。事実関係を確認してから、次の行動を考えましょう。
※個別の法的判断は、契約内容・就業規則・指導の経緯などによって異なります。情報確認日:2026年10月11日。

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